《えー、ここでまたRか……》
AIの光希が少々呆れたように言った。
《外見は好みでないし、格好もさえないし、フードコートで蕎麦(そば)でしょう?
絶対にテレビマンや銀行マンのイケオジたちの方がいいじゃない。
そこでRか……いったいどんな感じの電話だったの?》
「そうよね、私もそう思ったのよー。
Rとは話は合って、愉しかったけれど、
茶飲み友達にはなれても、
恋の対象には絶対ならないと思ったもの」
と私もうなずいた。そして、続きを話し始めた。
「実は私、翌日も初対面の男性とのデートが控えていたから、さっさと準備を整えて、早めに寝ようとしていたの。
とにかく、旦那が海外へ出掛けている数日の間に、出会い系サイトで知り合った5人の男性たちと会わなければならなかったから、
デートの約束を連日入れていたのよ。
お風呂から出て、寝間着に着替えて、さあベッドへ入ろうとしたところへ、Rからメールが届いたの。
彼はさえないくせに、タイミングだけはやたらさえていたわ」
・
今日は愉しかったですねーと、定型的なメールを短く交わして寝るつもりだった。
しかし、Rは唐突に、
『今、電話してもいいですか?』
と聞いてきたのだ。
(え?今日はさっきまで、あんなに長く話してきたばかりなのに……?)
と私が戸惑っていると、続けて送られてきたメールに
『あなたの声が聞きたくなってしまいました』
とあった。
なにやら微笑(ほほえ)ましい気持ちになった私は、思わず「いいですよ」と返信してしまった。
するとすぐに電話がかかってきた。
他愛ないおしゃべりが続いた。
2人ともが大好きな映画のことから、宗教のこと、果ては彼が体験した心霊現象のことまで、
物知りでユーモアたっぷりの彼の話は実に面白く、気付くとまた、あっという間に時間が過ぎていた。
間もなく深夜の12時だ。
私は今日、このさえない初対面の男と、
気づけば昼間から8時間も話していることになる。
「では、そろそろ寝ますね」
連日のデートで疲れていたし、明日のデートに差し支えるから、
さすがにもう眠りたかった。
するとRが言った。
「明日、会えませんか?」
「へ?明日?」
さっき会ったばかりなのに!?と心の中で聞き返した。
「はい。あなたにすごく会いたくなってしまいました。すごく……会いたいんです……」
明日は、画像で見た外見も感じの好い、
航空会社勤務の40代男性と初デートの約束をしている。
そもそも私は、このお盆休み中のごく短い期間に、
恋の相手を探したいのであって、
茶飲み友達を探しているわけではない。
それに、明後日には夫が帰ってくる。
したがって、Rと2度もデートしている余裕はないのだ。
しかし、またしても、私は思考とは異なる行動に出た。
「いいですよ。明日も会いましょう」
と返信したのだ。